· 

金利だけでは選べない

 住宅ローンを選ぶ際、一番最初に目に留まるのが金利です。数字で分かりやすいからです。そしてどの金融機関も、金利の低さを前面に押し出して、広告やチラシを作ったりします。

 

 20年ほど前なら、選べる住宅ローンも多くなく、金利だけに注目していれば良かったのですが、今はそこだけでは不十分な時代になりました。

 

 理由は、住宅ローンの多様化と、住宅ローンに付随するものの複雑化です。

 

保証料と融資手数料

 金利以外に金融機関に支払うものとして一般的なのが、保証料と融資手数料です。

 

 保証料とは、昔のように連帯保証人を立てる形ではなく、保証会社に保証してもらう中で、その保証会社に対して返済期間中支払う金額です。

 期間を保証するものなので、一括で支払う場合、返済年数によって金額は違いますし、最初に組んでいた返済期間よりも早くで返済し終わった場合、残りの期間に応じて返還されます。

 早くで返済し終わるケースとは、繰上げ返済や借換えがあります。

 

 それに対し融資手数料とは、もともとは金融機関側の手続きに関する費用で、50,000円前後のものでした。取扱手数料などの呼称もあります。

 これは手続きをした時点で完了する手数料なので、最初に支払って終わりで、後からは一切返還されません。保証料とは、まったく性質の違うものだということです。

 

 近頃見る中では、保証料不要とうたい、同程度の融資手数料が必要というものもあります。

 それ自体には、いいも悪いもないというのが私個人の考え方です。金利を低くするための戦略の一つとして何を選ぶか、そしてそれをどのように伝えていくかを、各金融機関が考えて手を打っているはずだからです。

 

 ただ商品を売る側というのは何にしてもそうですが、伝えたいメリットは出来るだけ前面に押し出し、不利に働きそうなことは小さめに書くという心理がどこでも働きますから、それによって借りる側であるお客様が混乱する可能性があるということです。全体像を知らずに選ぶこともあるということ。

 それを防ぐために、そういう融資手数料などを含めた「実質支払金利」のようなものを提示することになっていますが、背景を知らないお客様には、それが何のことなのかわからないこともあります。

 

 

生命保険という視点

 住宅ローンは、「借金」という側面と「保険」という側面を持っています。ほとんどの住宅ローンは、団体信用生命保険という保険に加入することが条件となっているためです。

 この生命保険の保険料は、金融機関が負担しています。ゆえに、この団体信用生命保険に加入できない方には、住宅ローンの融資をしないということになり、健康な時でないと借り入れが出来ないということになります。

 

 団体信用生命保険は、一般的に死亡と高度障害を保障していますが、その保障範囲を広げるオプションが存在します。オプションを付ける場合は、それに伴う費用はお客様が負担するというものです。

 低金利が続き、金利を下げるにももうこれ以上は難しいという中で、私が「住宅ローン第三世代」と勝手に名付けている状況になりました。

 それは団体信用生命保険の一部のオプションを無料化することで、お客様に遡及できるメリットを増やそうということです。

 同じ金利であれば「借金」という側面での商品性の違いはありませんが、「保険」の部分に差をつけることによって、商品性の違いを遡及していくわけです。

 

 ややこしいのが、このオプションに関する部分が、各金融機関でバラバラだということ。おそらく保険に精通していない一般のお客様がそれぞれの金融機関を回って説明を受けたとしても、その違いが分からないほど複雑です。

 

 

計画の違いによる利用の可不可

 住宅ローンが絡む計画というと、家を建てる、土地を買って家を建てる、建売住宅を買う、中古住宅を買う、中古住宅を買ってリフォームやリノベーションをする、新築マンションを買う、中古マンションを買う、中古マンションを買ってリフォームやリノベーションをする、住んでいる家の大規模なリフォームやリノベーションをする、借換えをする、と様々です。

 それぞれで、住宅ローンの申し込みから実行までのスケジュールの違いがあります。

 借換えをする場合はそんなに考える必要はないかもしれませんが、それ以外のケースでは、そのスケジュールによって使えるローンや苦手なローンがあったりします。その違いを知らないことで、希望の物件を手に出来なかったという事態にもなりかねません。

 

 さらに前述の団体信用生命保険のオプションに関する部分ですが、計画の違いによって、金融機関側の取り扱いも変わってきます。使える使えないがあるということです。

 そういう意味で、この計画ならこっちの金融機関の方がメリットがある、こっちの計画なら違う金融機関の方がメリットがある、というような複雑さまで出てきました。

 

 

 以上のように、金利だけで選べる時代ではなくなり、複雑化の一途をたどっています。

 目先の数字に踊らされることなく、本質的な理解をすることが必要です。

 もちろんマイホームプロデューサーなどの専門家の力を借りて頂くことで、時間や労力の短縮になるはずです。大切なお金のことですから、間違いない選択をするためにも、専門家の力は有益です。

 

 


メモ: * は入力必須項目です